Director's Note

by TOKURO AOYAGI

先週は久々にNY出張。前回が確かコロナ禍前だったので、本当に久しぶりの訪問だった。

時差ぼけでフラフラしながら、ホテルに着いてすぐに向かったのは、やっぱり我らがNEPENTHES NEW YORK。チェルシーからミッドタウンへ、34丁目を超えてガーメント・ディストリクトに入ると、かつてこのあたりで仕事をしていた自分が嘘のように思えてきた。懐かしいというよりは、まるで前世の記憶のような、現実感のない不思議な気分。あの頃のディテールが記憶の中で夢みたいに霞んでいくのは少し寂しくもある。けれど、帰国してからの約二十年、ただ目の前のことを夢中でやってきたから、それもいたしかたない。

滞在中に週末を挟んだので、ニューヨーク・タイムズのサンデーエディションを買った。アメリカを代表する新聞の日曜版で、本紙のほかにファッション・カルチャー・アートなど様々なジャンルの特集記事がある大ボリュームな一冊。日曜朝のカフェに入ると、この分厚い紙面を広げて読む人々をたくさん見かけるのは、まさにニューヨークならではのおなじみの風物詩。

そんなサンデーエディションのファッション特集冊子 SUNDAY STYLES「THE BEST CLOTHING STORES」にNEPENTHES NEW YORKが選出され、ニューヨークのベスト25店として紹介されていてびっくり。

週明けのオフィスで、その記事をきっかけにたくさんの新しいオーディエンスが来店してくれた話を聞いて、皆で感謝感激。今年で十六年目を迎えたNEPENTHES NEW YORK。伝統ある紙面にこうして紹介されるのも、この街にしっかり根付いている証拠だろう。長年通い、支え続けてくれる顧客の皆さん、それをしっかり見ていてくれた編集者に心から感謝しています。

やっぱり、店があるというのは幸せなこと。日本から遠く離れたこの街に、自分たちの居場所がある。ただそれだけで気持ちが安らぐし、街への愛着も一層増していく。日本から来てくださるお客様も同じように感じてくれたら、これほど嬉しいことはありません。

来季発売となる〈EG WORKADAY〉Tシャツの背中には、1989年に大器さんが一人でボストンに立ち上げてからこれまでのNEPENTHESアメリカ社の歴代オフィス住所がプリントされている。長年の思いが詰まった胸熱Tシャツなのだけれど、デザインとスペースの関係で、実はあともう二つの住所が未掲載。

そして、それらはちょうど私がNYにいたときに当たっていて、在住していた約十年の間に三回もオフィスを移転した。なにしろあの頃は引越しが多くて、思い出すだけで眩暈(めまい)がするほど。いま思えば、すごいエネルギー。なんでもやれるような気負い・気合い・勢い。そして、そんな熱量の中で〈ENGINEERED GARMENTS〉が生まれ、新たな章が始まったのでした。

青柳 徳郎 / Tokuro Aoyagi
NEPENTHES Director / President
今月のお楽しみは、滝藤賢一さん出演の映画『八つ墓村』。しかも、演じるのは要蔵!公開が待ち遠しい。

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TOKURO AOYAGI 青柳 徳郎

NEPENTHES ディレクター。 1970年生まれ。 東京都出身。
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